「約束を反故にされた」というフレーズは、ニュースや日常会話でたまに耳にしますよね。
「ほごにされた」と読む、アレです。約束をすっぽかされたくらいの意味ですね。
こんな感じで、「反故にする」「反故にされた」という意味はなんとなく分かっていたのですが、
先日読んでいた漫画『薬屋のひとりごと(原作:日向夏 作画:倉田三ノ路)』を読んでいると、こんなセリフを目にしました。
この反故、捨てておいてね
これを見て私は「???」となったんです。
「反故」の見たことのない使い方だったので。
ということで調べてみたら、反故の語源や由来、紙に関連する知識が意外と面白かったのでご紹介させてください。
マンガ、面白いのでぜひ!
反故=書き損じた紙
調べてみると、
反故(反古とも書く)とは、元々は書き損じて使えなくなった紙のこと。
ということが分かりました。
「反」という漢字には、反る・裏返すという意味があり、「故」には使い古したものという意味があります。
これが組み合わさった「反故」なので、裏返さないと使えない古い紙という意味になったと考えられているそうです。
だから、「この反故捨てておいて。」というセリフは、「その書き損じた紙、捨てておいて」くらいの意味になるということですね。
意味が転じて「役に立たないモノ」という使われ方に
このように「反故」は元々、書き損じた紙という意味だったのですが
書き損じた紙=もう使えないモノ=役に立たないモノ・無駄なモノ
のように意味が転じていきました。
ということで、「約束を反故にされた」という使われ方がされるようになったのですね。
反故の使い方と例文
ビジネスシーンやニュース、日常会話で使われる場合は、次のような感じです。
- 約束が反故にされた。
- まとまりかけた契約の話が反故になった。
- 選挙の際に提示された公約は、ことごとく反故にされた。
- そんな態度をとるなら、このあいだの話を反故にしてやろうか。
- 粘り強く交渉してきたのだから、ここで契約を反故にするのはもったいない。
「無効にする」「取りやめる」「取り消す」「キャンセルする」のような意味を、それっぽく伝えられるので結構便利ですね。
一方、元々の反故の意味(=書き損じた紙)で使う場合の例文はこんな感じです。
- その反故にメモしていいですよ。
- 反故を回収業者に出す。
- その反故紙(ほごがみ)を再利用してください。
- 「辻堂を大きくしたようなこの寺の本堂の壁に、新聞反古を張って、この坊さんが近頃住まっているのである。」
(森鴎外『独身』青空文庫)
このように、書き損じた紙として使う場合もあるそうです。年配の方の会話では使うのでしょうか。
この意味で使うときは、反故紙(ほごがみ、ほごし)と言うと分かりやすいかもです。
反故を扱う職人さんが「冷やかし」の語源に
反故について調べている過程で、ちょっと面白い豆知識をゲットしました。
それは、「冷やかし」「冷やかす」の語源です。
冷やかすの意味は
・ 相手が困ったり恥ずかしがったりするような言葉をかけてからかう。「仲がいいのを—・す」
・ 買う気もないのに、商品を手にとったり値段を聞いたりする。「露店を—・して歩く」
冷(や)かす(ひやかす) – goo国語辞書
のように、主に2つの意味があります。
反故紙が関連するのは、後者の意味(お店などで買う気はないのに見て回る)のほうです。ちなみに、こちらの意味で使うときは「素見す」とも書くそうです。
江戸時代、浅草山谷という地域には、反故紙を再生して作る「浅草紙」の職人が多く住んでいました。
浅草紙の主な用途は今でいうトイレットペーパーで、収集した反故紙を水で煮て溶かして作ります。
その工程で、煮た反故紙(だったもの)が冷えるのを待つ必要があるのですが、その待ち時間に職人たちは近くにあった吉原の遊郭によく散歩に出かけたそうです。
吉原に来たとはいえ、実際に遊女と遊ぶ時間的余裕(も金銭的余裕)もなく、職人さんたちはただ見て歩いただけでした。
そのため、その職人たちは「紙を冷やかして来た人」と呼ばれ、そこから「冷やかし」という言葉が生まれた。
という説です(参照『浅草紙によせて』山田卓良)
面白いですよね(私だけ?笑)
浅草紙の見た目や詳細については、こちらの学研のページでご覧いただけます。
まとめ
反故には「書き損じた紙」という意味がある。
そのため、「約束を反故にされた」という使い方のほかにも、
「反故を回収してもらう」とか「反故紙の裏にメモを書く」といった使われ方もされる。
以上です!
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